胸のうち 目に現れる 桜曲
一昨日は春の嵐が過ぎていった。
降り始めは白糸の雨だった。
山桜の、淡い淡い薄桃色の小さくてまるい花びらが白糸の中を舞っていた。
春雨の五線、桜の音符。空模様はト音記号とヘ音記号。風の流れがリズムを。
いつもの景色がそのようにみえた。
次第に天候は荒れていく。
夜中も激しかったようだ。時々、外の気配に覚醒した記憶がある。
目覚めたら、嵐は過ぎて、きらきらとしずくが輝いていた。
陽が届き、いくつもの小鳥たちのおしゃべりと、甘くやわらかい空気が満ちていた。
この日は、朝から胸がざわめいていた。
なんだか穏やかじゃない。
必要な事が起きている。俯瞰して。冷静に。
スッキリしない時は深呼吸。
いいところ探しにフォーカスする。
仕事に精を出す。気づけば午後には気分が落ち着いていた。まわりも穏やかな時間を過ごしていた。
夜。身体も脳も気怠くぼうっとなっていた。仕事の充実感はあった。まわりは穏やかではない様子をみせていた。
気がかりな事象が起きた。
胸はもやもやとして苦しかったけれど、私の睡魔は強かった。
すっきりと充実感のある睡眠ではなかった。定時に目は覚める。
今日の目覚めに感謝しながら、カーテンを開ける。
西の端に、ぽっかりと満月がいた。
そう、昨夜は嵐だったんだ。
胸の奥の重さも甦える。
満月に会えたことに感謝。
私は今、ここに生きている。
もうすぐ、陽がのぼる。
色が、音が、繋がっていく。
桜交響曲。