風薫る 峠を越えて 熊野詣
高野熊野参詣道旅 6日目 小辺路ルート 4日目 果無峠越 〈八木尾〜熊野本宮大社〉
今日は最後の峠越えで本宮にお参りできます。
慣れない山歩き。
スリルはあったけど、怖かったり不安はなかった。
夢中で歩いた。
ここまで来た。
最後の峠越え。気合いを入れて行こう。
定時に起き、美味しい朝食をいただき、出発。
お約束通りに、野猿(吊り橋)は渡らず、小辺路登山口まで車で送ってもらった。
車中で聞いた。昔の人だって橋、渡ってないですよね。
しばらく沈黙の後、渡ってると。
マジか。なればここを渡らないとルートを完歩したことにはならないのか。と昨日バスには乗ったのに、私の中の正義感が、それでいいのか、と騒ぎ始めた。
実は前日、この橋を渡る件で家族にも言われていた。それもルートなら挑戦すべし。と。
風が強いとか、昔の人はこんな橋は渡ってないはずとか、言い訳をたっぷりして、自分を正当化していた。
登り口まで送ってもらったけれど、胸が痛んだ私は、そこから、橋を渡ったところまで歩いて戻った。とりあえず、橋は渡ってないけど、渡った所からは歩こう、と。
着いた。橋の渡った所に。
いいのか。このまま、この橋を制覇しなくて。
自分との闘いの末、とりあえず勇気を出して橋を歩いてみることにした。
揺れた。縦に。意外と行けるかも。と思った。
大目に見て、もうすぐ半分か。というところまで勢いよく来た。
勇気を出して渡ろう。と一瞬は思ったけど、半分すぎて動けなくなってしまったら?向こうまで行けたとして戻るとは、往復歩くということ。だったら最初から歩いていれば、片道で済んだじゃん。
さっきの車中で、一旦渡ったけど無理で、結局登山口まで送った、という事もあったという話が浮かんだ。
ちょうど、強い風が吹き、我に帰り、無理はしないで引き返すことにした。
ほぼ半分まで渡ったから、ここまでの往復で、渡ったということにしてもらう。と自分の中で折り合いをつけた。
ここから家族に、ズルしたけど渡ったと写メしてみた。褒めてくれた。けど、ちゃんと渡れたと勘違いしているようだった。
ようやく、先に進めるようになった。時間も30分は要してしまった。急がなきゃ。
さっきの登り口から登り坂が続く。
今日もいいお天気。景色も最高。
果無集落は、にほんの里100選。熊野古道を代表する景色。天空に心落ち着く美しく懐かしい世界がありました。
三十三観音石仏が峠の道沿いに、いろんな表情で迎えてくれました。
観音堂でお水をいただき、もう少し。急な坂を登って果無峠に着いた。
最後の峠。
誰もいないそこで、ありがとーっ!って叫んだ。
記念に録画を撮っていら、道ではない山の上から1人の爽やかな笑顔の素敵なお兄さんが下りてきた。
今まで誰もいなかったのに、なぜこの場所で、このタイミングで、しかも道のない山の上から現れるのか。(道はあったのかも)
この上に三角点があるようなので見てきたと。
お兄さんは、これから私が下りていくルートを上がってきて、クロスする縦走路に行くとのことでした。
記念にと写真を撮ってくれた。
そのあと、急ぎ足で登って行った。
過ぎてみたら、この山では、このお兄さんにしか合わなかった。
峠の先は下り。急だったり、足場が悪かったり、崖だったり。
気をつけながら下りた。
本宮町を望む所に出た。
遠くに、きっと大鳥居だろう。と思われる景色だった。
来た。もうすぐ。
観音石仏が今でも優しく佇んでいる。
苦しくても、その優しさに励まされた。
昔の人も想いは同じなんだろうな。
険しい道に祀ってくれたくれた方々、管理してくださっている方々に感謝。
果無峠を下りた。
そこに静かに流れる熊野川はエメラルドグリーン。
美しい色。
国道に出てしばらく行く。
道の駅ほんぐうに寄る。
トイレに寄り、今晩のお土産のさんま鮨とご当地茶の音無茶ソフトクリームを買った。
気がつくと時間がなかったので、ソフトクリームは歩きながら食べた。
地元の小学生の下校時刻で、元気な男の子が車道の反対側からこんにちは。と挨拶してくれた。私も挨拶をしたんだけど、ちょうど大きめの最後の一口を頬張ったところで、言葉にはならず、変な音になってしまった。嬉しかったので、笑顔で敬礼もした。
国道を進み、分岐点を案内通りに進む。
いよいよ、三軒茶屋跡か。懐かしい景色が近付いてくる。
私が初めて熊野古道を歩いたのは、発心門王子から本宮。大鳥居を抜け、大日越。
その時から、熊野のお山、熊野古道の神聖なエネルギーに惹かれている。
中辺路、大雲・小雲取越、赤城越を歩いた。
小辺路を歩きたい。と、三軒茶屋跡の九鬼ヶ関所跡で、小辺路からの道を覗きながら思っていた。
その、関所跡が近くなる。
着いた。
今までの道がここに繋がっていた。
私は歩くことが出来た。
嬉しい。
ありがとう。
さんざん、そんな想いでウロウロして、名残り惜しいのですが、先を急がねばならなかった。
そういえば、初回意外、いつもここは時間ギリギリで急ぎ足だ。
いつも、次回こそは、と思ってた。
ゆっくり道の終わりを味わいたいところ。
次回こそ。
あんなに狭かった古道は石畳となり、広くなっている。
差し込む陽に、草木は両手を広げ、私を受け入れてくれている。
私しかいない道。
嬉しい。
また来れた。
必ず、時間ギリギリでも、走ってでも、展望台には寄り道をする。
大鳥居をここから拝む。
私にとって、大鳥居は宇宙と繋がる場所。
中央の大鳥居。肉眼でははっきり見える。
ここからこのお姿を見て感激するのだ。
感謝。
合掌。
ゆっくり浸っていたいけど、先を急がねば。
早足で石畳を進んだ。
石畳が終わる。
今回も私を助けてくれた、相棒のストックにも感謝。
道の終わりで写真を撮る。
本宮の裏門に到着。
感無量で、大社の横を過ぎる。
もう、頭も体も「空」という感覚。
正面に着く。
大社は今日も厳かで清々しい。
今回も無事にお参りできました。
呼んでくださりありがとうございました。
合掌。
本宮大社のゴールは大鳥居。
参道を下り、道を渡り、大斎原へ。
写真1番上。
爽やかな風が渡っていった。
黒く鉄製の大鳥居。日本一に大きい。
近づくにつれて、そのエネルギーの強さに無抵抗となる。
また、ここに来れた。
合掌。
爽やかな風が渡る。
今来た道を戻る。大鳥居を背にして歩く。
背に感じる。
大きなエネルギー。
大社前に、今日のお宿からお迎えに来てくれる約束。
約束時間あと10分。
いつもここの観光協会に寄り、新しい情報や地図をゲットする。
今回もそうした。
それで時間ジャスト。
今日のお宿は、渡瀬温泉。
無事本宮にお参りできました。ゆっくりお湯につかります。
お風呂の後の生ビールの美味しいこと。
何度もお風呂に入りました。
露天風呂からは、まあるい月が山から出てきて輝いていた。
明日は満月。
明日は、いにしえの方たちがしたように、川下りで速玉大社にお参りに行く。その後那智大社にお参りをする予定。
今、無事にここに居る。
感謝。
合掌。