山影に 布袋が笑う 神無月
なんとなく重たい心持ちだが、足を運んだ静かな芸術祭。山に入っていく閑静なお寺へ。
そのお寺の境内にあるお茶室の襖絵を描かれ、その他幾つかの日本画の作品が展示されている。
今、私の心の中は何となくもやもやとしている。
見上げれば、私の心持ちが現れているかのような空模様。
薄曇が空を覆っている。
淡い青空の覗く空もあれば、ねずみ色の大きな雲が存在する空もある。
お寺へは境内の手前からだんだんと草木が深くなり、人影もなくなり、進む道の先にはお寺へ向かって石畳の階段が続いていた。
私、こういう場所が大好き。
心が鳴った。
山門をくぐり、石段を上る。
鐘桜門が、紅葉には早い緑の中にその趣を醸し出していた。
拝観順路の案内通りに進む。
鐘桜門をくぐり、つづく道をゆっくりと歩く。
薄陽を受けて、盛りの終えた秋色のお庭は、本堂の姿といい、
時には帰りたい日本の風景だった。
足元に、大好きなホトトギスが静かに花を咲かせていた。
心のもやもやの理由はわかっている。
今の生活の状況が、想い描く理想的な、望しい状態でないからだ。
必然な事が起きていると思っているし、必要だから起きていると思っている。
しかし、もやもやとしているのは、すっきりしなくていい気分じゃない。
私の周波数、落ちているかな。
でも、こんな素敵な環境が目の前に展開されているし、状況を俯瞰してみると、どちらかというと絶対にいい状況だ。
いつも言っている。自分にも、大切な人達にも。
「今を味わおう」
痛みも苦しみも。
それを楽しもう。
これと同じフレーズ、TVからも流れてきたんだよなあ。
こんなことを心の中で問答していた。
道案内に布袋尊と。
その先を歩いていたら、遠くの山影の中に
人と同じ丈の布袋尊が現れた。
曇り空だったし、山影で薄暗い中だったけれど、
何とも言えない笑顔。
心が砕けてしまった。
私は生きている。
目の前にいる布袋尊は石像。
いつの時代に誰が作ったのかわからないけれど、
このもやもやの心を一瞬でほぐしてくれるたエネルギー。
作り手の心、エネルギーを感じた。
凄いな。
布袋尊に出会えた感謝をした。
さて、布袋尊ってどんな神様だっけ。
布袋尊に別れを告げ、歩きながら考えた。
目的のお茶室が見えて来た。
古い日本家屋。
とても素敵。
そのお茶室の襖絵。
蓮。
蓮の花、大好き。
仏教の教えも好きだし、お花の色や形が好き。
葉の形や質感が好き。
種を持つ姿や色が好き。
蓮根も天ぷらや酢の物など、大好き。
襖絵も、他に展示されていた作品も、みんな素晴らしかった。
描かれていた花たちは、どれも気品があって、優しくて、花自身がモデルのようにプライドを持っていきいきとしていた。
この絵からも、エネルギーを感じた。
作家さんの想い、心。
お花自身のエネルギー。
ほら、共鳴してるよ、私。
宇宙の愛を感じる。
素晴らしい。
ありがとう。
素敵な秋のひとときでした。
場所 : 北鎌倉 浄智寺
日本画家 : 安住小百合 先生